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子ども・家族・支援者のための『9月1日の君へ』レビュー|各分野で活躍する7人の不登校・希死念慮へのメッセージ



9月1日――この日は、小中学生の自殺や不登校が年間で最も多い日とされています。

 

 

統計上、5月の連休明けと並んで、大きな「壁」になりやすい日です。

 


きっとこの記事を読んでいるあなたや、あなたの身近な人も、今つらさを抱えているのかもしれません。

 

 

私自身、中学時代に不登校になり、死にたい気持ちに押しつぶされそうになった経験があります。

 

 

今でこそ図書館で障害者枠として勤務していますが、あの頃の私は、朝起きることすら苦痛で、将来なんて全く想像できませんでした。

 

 

今回ご紹介するのは、代麻理子さんの著書 『9月1日の君へ―明日を迎えるためのメッセージ』 です。

 

 

タイトルからは小中学生の当事者向けの印象を受けますが、読んでみると、高校生以上の方や、保護者・支援者にとっても価値のある内容でした。

 


この本には、不登校希死念慮に悩む若者に向けて、さまざまな専門家のメッセージが収録されています。

 

 

この記事では、私が特に印象に残ったメッセージを紹介しつつ、当時の経験を踏まえた感想をお伝えします。

 


そして、もしあなたに読む気力があまりないなら、最初の山田玲司さんのメッセージだけでも読んでみてください。

 

 

 

 

 

本の概要

 

 

この本は、長い間「死にたい」という気持ちから抜け出せなかった著者・代麻理子さんが、不登校や生きづらさに悩む子どもたちに寄り添うため、各分野で活躍する専門家にメッセージを依頼し、一冊にまとめたものです。

 


登場するのは、NPO代表、哲学者、精神科医、漫画家、生物学者など多彩な顔ぶれ。

 


「学校に行けない」ことを責めない視点や、「生きる意味」「人と違うことの価値」など、切実な問いに真正面から答えようとするメッセージが詰まっています。

 

 

 

専門家のメッセージ紹介

 

※この記事の小タイトルは、筆者が特に印象に残ったポイントに沿って独自につけています。

原書の小タイトルは記事末尾にまとめています。

 

 

山田 玲司(漫画家)ーおかしいのは君じゃなくて社会だー

 

 

💡こんな人におすすめ

 

📌不登校はおかしくないと、強く言ってほしい当事者


📌不登校について視野を広げたい大人の方


📌「生きる意味」を漫画やカルチャーの視点で感じたい人

 

 

📖印象に残った箇所

 

p29
悩んでいる方は、今のそのつらい時期を筋トレだと思ってほしいです。苦労をしていると力がつきます。

(中略)

だから、死のうかなと思っている人のほうが筋肉がついていて、誰か助けようとしたり、共感性が強かったりします。

(『9月1日の君へ』p29)

 

 

📝私のコメント

 

山田さんは、漫画家でありながらYouTubeで若者にメッセージを発信し続けている方です。


「おかしいのは君じゃなくて社会だ」と何度も伝えられてきました。


私自身、不登校の頃は朝起きるだけで精一杯でした。でも今振り返ると、あのとき必死で生きた時間が、今の私を支えています。


山田さんの言葉は、学術用語を使わず、まっすぐで温かい。だから、当事者にも大人にも響きやすいと感じました。

 

 

 

小林 康夫(哲学者)ー東大名誉教授が語る、自殺してはいけない理由と対処法ー

 

 

💡こんな人におすすめ

 

📌死と真剣に向き合っている方


📌死についての考え方を整理したい人


📌哲学に詳しくないけど、深い言葉に触れたい人

 

 

📖印象に残った箇所

 

君はまだ旅の途中だ。この旅には目的地はない。旅をしていることが大事なんだ。


生きていると、苦しいこともあるしいやなこともある。

 

でもそういうことを引き受けながら、君が、まだ君ではない君が、君らしい君になっていく。


そのゲームをやめちゃうなんて思っては駄目だ。

(『9月1日の君へ』p58)

 

 

📝私のコメント

 

哲学者としてではなく、一人の人間として語りかけるように話されているのが印象的でした。


中学時代、死にたい気持ちが続いていた私も、この言葉を聞いたら少し肩の力が抜けたかもしれません。


本書では「死にたい」という気持ちへどう対処するか、具体的なアドバイスもあります。


特に、死と真剣に向き合っている方の心に届くと思います。

 

 

 

石井 しこう(『不登校新聞』代表)ー「休んでいい」と伝え続ける不登校ジャーナリストの言葉ー

 

 

💡こんな人におすすめ

 

📌「自分はおかしい」と感じている当事者


📌不登校で孤独を感じている人


📌不登校という問題と向き合う大人の方

 

 

📖印象に残った箇所

 

学校に行かなくても、きちんと人生は続いていきます。


私も不登校したとき「人生詰んだ」と思いました。でも、そんなことはありません。


楽しいこともありますし、つらいこともある。平凡な人生が待っています。

(『9月1日の君へ』p82)

 

 

📝私のコメント

 

この言葉は、当時の私に一番必要だったものです。


不登校=人生終わり」だと思っていた頃、こういうメッセージを知っていれば、あんなに自分を責めずに済んだかもしれません。


不登校新聞』の説明もあるため、宣伝に感じる方もいるかもしれませんが、「こんな場所がある」と知るだけでも安心できます。

 

(補足)『不登校新聞』は2024年に解散しましたが、石井さんは現在、不登校ジャーナリストとして活躍されており、当事者や家族に向けた情報発信を続けています。

 

 

 

夏目 誠(精神科医産業医)ー精神科医が伝える:敏感さは力になるー

 

 

💡こんな人におすすめ

 

📌専門家による中立的な立場からの助言を求める当事者


📌精神科医の現場に興味がある人


📌ご家族や支援者など広くおすすめ

 

 

📖印象に残った箇所

 

p125


死にたいと思う人は自分の弱さを知っているから、他人に対しても優しくできます。
(中略)
敏感あるいはセンシティブな人は、自分でいろいろ考える。

感受性が豊かだから、小説やエッセイが書けるし、人に対しても優しくできる
(中略)
自分の心情を文章として吐露したとすれば、それを読んだ人が涙するかもしれません。

ならば必要とされているわけです。自分が見ている世界がすべてではありません。

(『9月1日の君へ』p125)

 

 

📝私のコメント

 

この言葉を読んで、「私も敏感なほうだな」と思いました。


今の職場でも「細かいところによく気づくね」と言われますが、それは弱さではなく、誰かの役に立てる強みなのだと思います。


夏目さんの章では、不登校の背景をどう捉えるか、精神科医として当事者や家族にできる助言、さらに社会構造の問題についても触れられています。


専門家としての冷静さと、人としての温かさの両方が感じられる章でした。

 

 

 

本川 達雄(生物学者)ー生物学からのメッセージ:ゆっくり生きてもいいー

 

 

💡こんな人におすすめ

 

📌科学的な視点で不登校を考えたい人


📌生物学に興味のある人


📌「自分のペースが遅いのはダメ」という思い込みを手放したい人

 

 

📖印象に残った箇所

 

エネルギー消費量というのは、個体ごとに多様性があります。人間の場合は人ごとに少しずつ違います。

たとえば、朝起きてもなかなか体温が上がらない人もいますし、すぐに上がる人もいます。

(中略)
なんでもゆっくりやる人なのであれば、それでやれるように工夫すればいいだけの話です。
(中略)
締め切りに間に合わなくても「私は無能で駄目だ」と落ち込む必要は全くありません。社会の側がおかしいのです。

(『9月1日の君へ』p167)

 

 

📝私のコメント

 

「無理に頑張らなくてもいいんだ」と、肩の力が抜けました。


私は障害者枠で働いていて、「いつかは健常者と同じくらい頑張らないと」と思っていましたが、その考えが必ずしも正しいわけではないと気づきました。


算数や理科が苦手な方にはやや難しく感じるかもしれませんが、身近な例を挙げてくれるので、大まかなニュアンスはつかめると思います。


「社会の側がおかしい」という指摘には賛否あるかもしれませんが、「こういう視点もある」と知るだけでも救いになる章でした。

 

 

 

今井 紀明(認定NPO法人D×P代表・株式会社SOLIO代表)ー頼れる人がいることが生きる力になるー

 

 

💡こんな人におすすめ

 

📌居場所や生き方を模索している当事者


📌不登校に関する悩みを持つ家族


📌希死念慮を持つ人を支えたい保護者や支援者

 

 

📖印象に残った箇所

 

どんな人であっても、頼れる人がいてこそ自分が安定します。

一人だけの力でなんとかしようと無理しないでほしいです。

(『9月1日の君へ』p192)

 

 

📝私のコメント

 

今井さんは、18歳の頃、メディアの誤報で大きなバッシングを受け、PTSDや引きこもりに苦しみました。そのとき、友人に救われた経験があるそうです。


この経験から「若い世代が不条理に苦しまないように」と起業し、10年以上にわたり活動を続けています。


「頼れる人がいていい」という言葉は、過去の私にも届いてほしかった一言です。


支援団体の情報は一見宣伝に見えるかもしれませんが、実際に「こういう居場所がある」と知るだけで心が軽くなる方も多いと思います。

 

 

 

安藤 寿康(教育心理学・行動遺伝学者)ー死ぬ理由はない。苦しい時期を生き抜くためにー

 

 

💡こんな人におすすめ

 

📌希死念慮について理解のある人の考えを知りたい人


📌遺伝学に興味のある人


📌科学的根拠で気持ちを整理したい人

 

 

📖印象に残った箇所

 

自殺を実際に試みるかどうかというのは偶然なのです。遺伝でも、家庭環境でも説明できません。

たまたまその人がそれをしてしまうような、何か特別な状況に置かれたから、そういうことになってしまった。
(中略)
苦しい時期はいずれ終わります。その特別な状況からは必ず抜けられるものなのです。
(中略)
死ぬ理由は、あなたにはありません。

(『9月1日の君へ』p231)

 

 

📝私のコメント

 

安藤さん自身、18歳から10年ほど自殺願望を抱えていた経験を持っています。


「死ぬ理由はない」という言葉は、とてもシンプルですが力強い。


私も長い間「生きる理由がない」と思っていましたが、今はこうして文章を書けています。


不登校や自殺を考える背景には多くの要因が絡みますが、「それでも抜け出せる」というメッセージを、専門家から受け取れるのは心強いと感じました。

 

 

 

 

私が読んで得た3つの大事なこと

 

① 社会と距離を取れるのも生きるスキル

 

どの専門家も、現代社会がつらさを生みやすい構造を指摘していました。

 

今、距離を取っているあなたは、人生で大事なことを学んでいるのです。

 

 

② 生きているだけで価値がある

 

今は信じられなくても、あなたの経験が誰かを助ける日が来ます。

 

この文章を読んでくれている時点で、あなたは私にとって価値ある存在です。

 

 

③ 頼れる場所・居場所は必ずある

 

『認定NPO法人D×P』など、居場所や相談先は必ずあります。

 

 

今は信じられなくても、未来にはきっと出会えます。

 

 

次の章で相談先をまとめました。ひとりで(あるいは家庭内で)抱え込まず、ぜび相談してみてください。

 

 

 

当事者向け相談先一覧

 

 

A. SNS

 

サービス名 対象 受付時間
チャイルドライン

18歳以下

毎日 16:00〜21:00

子どもの人権110番

子ども

平日 8:30〜17:15

 

親子のための相談LINE ・18歳未満

・保護者の方など

自治体による

リンク先末尾)

 

 

B. 電話

 

サービス名 電話番号 受付時間
チャイルドライン 0120-99-7777

毎日 16:00〜21:00

24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310 毎日24時間
子どもの人権110番 0120-007-110

平日 8:30〜17:15

 

いのちSOS 0120-061-338 毎日24時間
よりそいホットライン

0120-279-338
※岩手・宮城・福島

0120-279-226
IP電話050-3655-0279

毎日24時間/ガイダンスが流れたら「5」を押す
東京自殺防止センター 03-5286-9090 毎日
夜20:00~翌2:30
※月曜は22:30~翌2:30
※火曜は17:00~翌2:30
いのちの電話 0120-783-556
IP電話03-6634-7830(通話料有料)
ナビダイヤル0570-783-556

毎日16:00~21:00


※毎月10日は
 8時〜翌日8時まで
 24時間対応

 

 

 

家族向け相談先一覧

 

📌不登校に関する地元の相談窓口文部科学省

 

お住まいの地域を選択すると、管轄の不登校児童生徒への支援を行っている公的機関を調べられます。

 

 

📌全国の親の会NPO法人 登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク)


不登校で悩む当事者の親同士がつながり、悩みを共有し、思いを分かち合える場です。(公式サイトより)

 

 

📌親子のための相談LINE(こども家庭庁)

 


不登校に特化してはいませんが、相談は可能です。

 

受付時間は各自治体によります。

リンク先末尾)

 

 

このほかに以下の人、団体も相談に対応してもらえる可能性があります。

 

📌学級担任、在籍校の職員


📌スクールカウンセラー


📌市区町村教育委員会


📌教育支援センター・教育相談所

 

 

 

本書を読むうえでの注意点

 

 

 

本書には「登校できるほうがおかしい」という表現が出てきます。

 

 

これは、登校することがつらい人を責めないためのものです。

 

 

「学校に行きたい」と思う気持ちが自然に出てきたなら、その気持ちを否定せず、登校してみてください。

 

 

どちらの選択も間違いではありません。

 

 

大切なのは、あなたの気持ちです。

 

 

 

おわりに|長い文章がつらい方は数ページのコラムも

 

 

この記事を開いた時点で、あなたはもう「どうにかしたい」と動いています。

 


気になったメッセージだけでも、1ページだけでもいいので、ぜひ本書をよんでみてください。

 

 

本書では7人のほかに、メッセージコラムとして6人からのメッセージもあります。

 

 

長い文章はつらい、という方はそちらでヒントが得られるかもしれません。

 

 

各コラムのタイトルを末尾に表にしましたので、ぜひ読んでみてください。

 

 

タイトル 9月1日の君へ ー 明日を迎えるためのメッセージ
著者 代麻理子
ISBN
978-4866240862

 

 

 

参考:原書の小タイトル一覧

 

作者(肩書)

原書の小見出し

山田玲司

(漫画家)

ダメでもいい。社会の「正しさ」から逃げて仮面を使いながらかわしていく

小林康夫

(哲学者)

「死」という重大な誘惑をどう乗り越えるか

石井しこう

(『不登校新聞』代表)

失敗だらけでも不登校でも人生が「終わり」ではない

夏目 誠

精神科医産業医

あなたの居場所はきちんとあるから生かされている

本川 達雄

生物学者

生物は在りて在らんとするもの。陸で生きているだけでものすごい。

今井 紀明

(認定NPO法人D×P代表・株式会社SOLIO代表)

ひとりの力で切り抜けられる状況ではない。頼れることが「自立」

安藤 寿康

教育心理学・行動遺伝学者)

孤独を感じるのには生物学的な理由がある。0.1%の遺伝子の違い

 

 

参考:メッセージコラムタイトル一覧

 

筆者(肩書) コラムのタイトル
大関 真之
東北大学大学院教授)
孤独な勇者
吉岡 洋
(美学者)
自愛について
橋爪 大三郎
社会学者、東京工業大学名誉教授)
自殺したい気持を乗り越える
横道 誠
京都府立大学准教授、自助グループ主宰)
自助グループのすゝめ
内田 樹
(思想家、武道家
自殺しないために
加藤 有希子
埼玉大学准教授)
死んだ人、生きた人、すべてを受け容れる